無人レジで考えた
行きつけのスーパーには、有人レジと無人レジとが設置されている。
有人レジはその名の通り、買いたい製品をレジの店員が機械を使ってバーコードを読み取らせ、値段を計算していく。計算の終わった商品は会計済みのカゴへ移され、最後に客が合計金額を支払う。
無人レジは店員がおらず、客が自分で機械にバーコードを読み取らせ、商品は自身の手でマイバッグかレジ袋へ入れていき、合計金額を機械へ投入する。
バーコードの機械を扱う作業と製品の移し替えとを、店員が行うか、客が行うかの違いとなる。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の爆発的な広まりにより、それまでは試験的だった無人レジの設置を検討している店も増えているようだ。
店員と客との接触の機会が減り、感染リスクの軽減を見込めるからとのこと。
だが、
それだけでないメリットがいくつか感じられた。
ひとつは、人件費の削減。
有人レジではひとつのレジにひとりに店員が必要で、商品の移し替えにも手間がかかる。これに対して無人レジでは複数のレジを備えながらも、機械トラブル、酒の販売に対する年齢確認などに必要とされる店員の数は少なくて済む。実際、私の通っているスーパーでは12台の無人レジに対し、常時1~2人で済んでいる。本来なら12人必要なのに、である。
ふたつめは、接触トラブルの回避。
店員も客も人間なので、相手の動作や言葉を気にしてしまい、時には些細なことに怒りが込み上げて、トラブルが発生する可能性もある。レジの対応が遅い、レジの列が混雑していて苛々させられた、相手の言葉遣いが気に入らない、など。
あるいは、財布からお金を取り出すのに手間取って、列を作っている人たちを苛立させる(あるいは苛立させてはいないだろうかと不安に思う)という状況もある。
そういったトラブルも、機械を通せば少しばかり軽減されるのではなかろうか。
みっつめは、これは最初のとは真逆の発想なのだが、人材を有意義に使うことができるのではなかろうか。
これを語る前にひとつ、日本のスーパーなどで当たり前に行われていることについて、どうしても納得がいかないことがあるので、聞いて欲しい。
『なぜ、レジの店員さんは立って仕事をしているのか?』
それが当たり前だと思う人は多いかも知れないが、外国では椅子に座ってレジを行ったり、商品をレジ袋へ入れる作業をさらに別の店員が行っているところもある。それどころか、店員と客とが談笑して待ち時間が長くなるのが当たり前だからと、待っている人ものんびりとスマホを眺めたり、他の客と談笑しているところもある。
日本型のレジは、世界共通というわけではないのだ。
メリットは、簡易な仕事であれば支障をきたすことのない軽度の障碍者や、足腰の弱った高齢者でも作業が出来る。定年後も働くことの出来る社会、いや、働かざるを得ないような社会で、さすがに体力の衰えを感じる高齢者でも、安心して仕事が出来るのはなかろうか。
デメリットも探せばいくつかあるけど、「作業の効率化=利益とは限らない」とだけ提言して、「のんびりした買い物」もいいと思うので、推奨したい。
店員とあまり接したくない、他人の目線が気になる、自分のペースで会計を済ませたい、あるいは急いで会計を終わらせたい人は無人レジで。
ゆっくりでも、あるいは言葉を交わしながらでも構わない、急ぎではない人は有人レジで。
そのような棲み分けも出来るのはないだろうか。
そう考えながら、昨日も今日も、無人レジでピッ、ピッと、マイペースに会計を進めていく。
缶チューハイ6本ケースに酒のつまみセットって、悪いことをしてるわけじゃないはずなのに、なぜか視線が気になってしまう。でも、そんなの気にしなくていいもんね。 そして明日もあさっても、マイペースにピッ、ピッと買い物を進めて……。
あ、デメリット、あったわ。
ついつい、買いすぎちゃうこと。
冷凍食品も補充しないと、そうだ牛乳も残りわずかだし。歯磨き粉もいるな、新しいふりかけがあるじゃないか、喉が渇いたのでコーヒーが飲みたいな、アニメコラボで限定カードがおまけで付いてくるポテチだと?!……と、店内を歩いているうちに品数が増えて、かご一杯になっちゃう。
時には視線を気にすることも大切かな。
でも人嫌いな私にとって、無人レジは神の賜物です。